AI研究の最先端を疾走する研究者たち
2025年8月28日、Zoom画面に映った甘利俊一先生は卒寿目前だ。情報幾何学の巨人が「AIと人のこころの近未来」というテーマで軽やかに語る姿は、まさにレジェンドの風格だった。
そして彼の周囲に座る登壇者たちも第一線の研究者だ。AIという最新技術の議論を、最もベテランの研究者たちが主導している光景は、ある意味で象徴的だ。
現役の研究者たちが雑務と評価システムに追われ、短期的な成果を求めて走り回る中、リタイアしていても不思議ではない研究者たちは異なる立場にいる。彼らには豊富な経験がある。純粋な知的好奇心がある。そして何より、制約から解き放たれた自由さがある。
「年齢は関係ない」というのは事実だろう。
ChatGPTが登場したのは2022年末。つまり90歳の甘利先生も20代の大学院生も、皆同じスタートラインに立った。違いは、その後どれだけ自由に思考を巡らせることができるかだ。
登壇者たちの目は輝いていた。AIの情動やメタ認知について語る時、制約のない探求心が溢れ出ていた。彼らが示しているのは、新しい時代に必要な研究姿勢かもしれない。
従来の専門領域の境界を越え、異分野との対話を恐れず、未知の領域に踏み込む勇気。
若い研究者たちにとって、これは実は大きなチャンスでもある。AIが既存の研究分野を変革する今、柔軟な思考と新しいアプローチを身につけた者が、次の時代を切り開くことになるだろう。登壇者たちの自由な発想は、そのヒントを与えてくれている。
制度や評価システムの制約はあっても、知的好奇心に年齢の上限はない。
「Sapere aude」=「敢えて、知れ(知ることを、恐れるな)」
哲学者カントが、啓蒙時代の標語として掲げた言葉だ。
賢者たちにぴったりの言葉だと思う。